オンガクカンキョウソウゾウカ?

視野を広げつつ専門性を固める
スタジオのエンジニアだけでなく、フリーでも音の仕事に携わる
プロジェクト3出身 2007年入学 元木一成さん
紀尾井町スタジオレコーディングエンジニア

卒業後、紀尾井町スタジオにてレコーディングエンジニアとして勤めていらっしゃる元木一成さん。後輩との交流も多い、元木さんが今音環生に伝えたいこととは?

偶然話が回ってきた

――何期生ですか。

2007年入学の6期生です。学部5年生まで在籍して2012年の3月に卒業しました。

――今レコーディングエンジニアとしてお勤めのスタジオは、卒業したあとすぐ就職されたのですか。

すぐではないですね。もともと音楽のレコーディングや音関係の道に進みたかったので、4年生の夏頃から西麻布にあるミキサーズラボという大手のレコーディングスタジオの会社で、ティーボーイ(アシスタントエンジニアになる前の研修)としてスタジオの受付や雑務のアルバイトをしていました。その後、大学の勉強が好きで5年生になることが決まってしまい(笑)、ティーボーイという研修生ではなく普通の受付アルバイトとしてその後も働かせてもらっていました。卒業後は週2、3日引き続きスタジオの受付アルバイトをしつつ、学生の時から個人で知り合いや友人から少しずつ受けていたミックスなどの音の仕事も並行してやっていました。また、卒業後はアルバイトと同時にアニメの音響効果の会社で研修というか修行みたいなこともしていましたね。

それでたまたま、そのミキサーズラボのブッキングマネージャーの方から、「知り合いがスタジオを新しくするから、スタジオのことが分かる人が一人欲しいみたいなんだけど受けてみない?」という話を頂いたんです。その方は今私が勤めているスタジオの社長の友人で、もともと別の場所にあった紀尾井町スタジオが今の場所に移転する時に、この話が回ってきたというわけです。

――じゃあ特に今のスタジオに務めようとしていたわけではなく、偶然、縁あって話が回ってきたということですか。

そうですね。

――スタジオは何人ぐらいで運営されているんですか。

基本的には社長とマネージャーと私の3人だけですね。スタジオのスタッフとしては私一人なんです。

――スタジオのこともやりながらでだと大変ではないですか。

ここは、元々アーティストでもある社長のプライベートスタジオなんです。なので常にスタジオを使っているわけではなく、社長の友人であったりつながりのある方に使ってもらっている感じですかね。時期にもよりますが毎日スタジオのスケジュールが入っているわけではないんです。ただその分レコーディングの日程も不定期で、私の休みも不定期なんですけど…。

また隣にサロンホールがあるんですけど、そこの運営もうちでやってるんです。だから私もホール利用のお客様の対応や事務的な業務をしています。常にスタジオで音をいじってばかりというわけではないですね。

――自分のやりたいことはやれていますか。

小さいですけどスタジオのエンジニアとしてやらせてもらっていますし、副業も認めてもらっているので、フリーランスとして外や自宅でレコーディングやミックス、ドラマCDの制作などの仕事もしています。大学を卒業する時に想像していたよりずっと自由にやりたいことをやれていると思います。

音の知識はほとんどなかった

――音楽環境創造科を志望した理由を教えて下さい。

子供の頃は機械やメカっぽいものが好きだったので、中学の時は将来機械工学系の方に行こうと思っていました。小学生の頃にエレクトーンとかピアノを少し習ってはいたんですが、練習が嫌で小学校卒業した時にやめたんです。でも中1の時に音楽の授業でクラッシクギターを触った時に「あれ?ギター面白い!」って思ったんです。そして趣味でアコ――スティックギターを弾き始めて、エレキギターも弾くようになったらますます音楽面白いなって思ったんです。それから音楽とか音に関する進路も考え始めたんです。専門学校も調べたりしたんですが学費が高いので、親からは国立の大学じゃないと行かせられないと言われましたね。そしていろいろ調べていくうちに、たまたま東京藝術大学の音楽環境創造科というものを見つけてしまったんです。たしかその時の資料で、学内のホールらしきステージで誰かがギターを持っている写真を見たとき、全然よくわからないけどなんか面白そう!って思ったのを覚えています。当時から音環に行くことしか考えていなかったので、地元の高専に進学するつもりだったのを普通科の高校に変更して、進路カードにも芸大の音環しか書いていませんでした。(笑)

――面接時の自己表現は何をやったんですか。

ギターを弾きました。MIDIで作ったカラオケ音源をMTRレコーダーに入れて、それとエレキギターを混ぜてアンプから出して演奏しましたね。ギターを弾いて芸大に合格できたのは音環じゃないと無理ですね。(笑)

――音環受験対策はどのような事をしましたか。

『ポケット楽典』は読んでました。(笑) 今思うと受験前は楽典や音の知識がほとんどありませんでした。放送部でマイクをつないで音を出したり、マイクにはダイナミックとコンデンサがあるっていうことぐらいで、音自体の知識は本当にありませんでした…。

――音環入って考え方は変わりましたか。

考え方が変わったというよりは、知らない知識がどんどん入ってきたし増えたという感じでした。

――どういう学生生活でしたか。

1年生の時はほとんど毎日朝から夕方まで授業を受けていました。だから千住と上野もよく行き来していましたね。私が入学した時は履修制限がなかったので「〜演習」とか面白そうな授業を片端からとっていました。

――学生の頃はどのような活動をしていましたか。

上野校地の学生とコンクール審査に出す音源の録音をよくやっていましたね。映像に音をつけたり、サウンドデザインはほとんどやってなかったですね。

――学生の頃の活動が今の自分に役に立っているなと思うことはありますか。

ピアノやヴァイオリンなど、クラシックの生楽器を録音していたことはものすごい役に立っています。北千住校舎のスタジオAは広くて響きもあるすごくいいスタジオなんだけど、逆に言えば楽器とマイクの距離や角度、部屋の中の楽器の配置など、よく考えてマイクを立てないとモサモサして良い音で録れないんです。私もマイクをたくさん立てて実験的に録音したり、EQなどを使わずにマイク2本だけでいかにピアノを良い音で録れるかを毎回悩みながらたくさん録音していましたね。その経験は今でも録音する時のベースになっていると思います。

視野が広がる

――音環でしかできなかったと思うことは何ですか。

自分がやろうと思っていなかったことができることじゃないでしょうか。たとえば有楽町と新宿のマルイでの空間音響デザインのプロジェクトはおもしろかったですね。新しく建てられるマルイの店内BGMや音響をプロジェクト1とプロジェクト3でデザインしたんです。プロ1は開店や閉店などの音楽を作曲して、プロ3は実際に工事中のマルイで音響測定したり、実際に音楽を流して、どのように聴こえるかチェックしましたね。またフロアによってどのような音楽が店内BGMとしてふさわしいかを数ある音楽から議論したりもして、学生で普通はこんな経験まず出来ないと思います。

あとやはり北千住校舎のスタジオはものすごいと卒業してから改めて感じます。学生の頃に使っていなかった機材もあるし、もっと使っておけばよかったと思いますね。

他にも、自分の専門以外でも面白い授業が受けられるのは大きいですね。DTPの授業でIllustratorやPhotoshopの使い方を学んで、映像基礎演習で映像制作をして、声楽の授業もあり、上野校舎でもガムラン演奏の授業やウェブ製作の授業も受けてましたね。芸大は面白い授業がゴロゴロ転がっていると思います。もちろん座学の講義もありますが、とにかく知らなくても興味があれば手を伸ばせる環境なので、視野が広がると思います。

コネは少ないですよね(笑)

――後輩にアドバイスをお願いします。

何でもできる学科だと思うのですが、なんでもできる分、在学中に自分で「これをやろう」って方向性を決めていかないと、何もできなくなると思います。今まで持ってた視野が一気に広がるので、視野を広げつつ自分の専門性を固めていくのが大事なのかなと。音環は新しい学科ですし音環に入れば将来こうなれるという学科でもないと思うので。私も今はレコーディングエンジニアとして仕事をしていますが、学生の頃から録音やミックスを周りの誰よりもうまくできるように自分なりに頑張ったという自信があります。

あと、同期や先輩や後輩はすごく大事。

――最後に一言お願いします。

就職を考えると専門学校と比べるとやっぱり直接的なコネは少ないですよね(笑)。でも自分から積極的に動けば全然無理ではないと思います。私も藝大出身のエンジニアということで興味を持ってもらえることもありますね。

それとプロ3限定のアドバイスになるかもですが、録音でマイキングとか色々こだわった分、その後のミックス作業も同じくらい色々試してみてください。ミックス談義ができると私が喜びます。Protoolsと仲良くなってください。

最後に、今ドラマCDを作っているんですけど、学生時代はサウンドデザインほとんどやってなかったんです。仕事でちゃんとやり始めたんです。大学卒業してからアニメの音効の会社で修行してたってさっき言いましたが、その経験もかなり生きてますね。ちょうど今も効果音を録っていて、新宿のハンズでこれ(奥から木製のブロックを持ってくる)を見つけて、これすごくいい音出るんですよ。(笑) (了 2013年12月)

 

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