オンガクカンキョウソウゾウカ?

音響は数学が大事!
数学の理解を深めれば、他の世界が見えてくる
プロジェクト3出身 2005年入学 田野倉宏向さん
現・(株)エー・アール・アイ所属

音響システム開発、音質評価コンサルティング関係の仕事で社会人2年目の田野倉さん。学部生から大学院まで音響について研究してきた経験、そして、仕事現場からみた後輩へのアドバイスを聞いてみた。

最新の研究をとらえるのが競争力になる

――どういう仕事をしているか説明して頂けますか?

社名はARIで、就職して2年目になります。音響システムの開発、ソフトウェア、ハードウェア、音質評価コンサルティング、立体音響システム開発などを主にやっている会社です。

――今までやってきた仕事を具体的に教えてください。

カラオケ用エフェクタープログラム、携帯の音質測定、会議システム音質評価のコンサルティングを行いました。ITUT(国際電気通信連合)の規格に合わせて、社内の無響室でダミーヘッドで測定をし、電話機(携帯電話)などの音質を高めるための開発をしてました。

――一番興味をもっていた仕事・プロジェクトはなんでしょうか?

バイノーラル音源を、ヘッドホンを使わずスピーカーで再生するトランスオーラルという立体音響技術は考えさせられることが多いです。

鼓膜に届く信号をそのまま再現することを目的としていますが、技術的な問題や心理的な問題で、私たちが聴いているイメージを完全に再現することはなかなか難しいです。私たちが聞いている音はどういうものなのか、それを本当に聞いている通りに記録・再現できるのか。仮に再現できたとして、録音技術や音楽制作はどういうコンテンツを作っていけるのか、そういうことをよく考えます。

フーリエ変換を徹底的に知り尽くせ!

――どのような展望を持って、音環を志望したか?

コントラバスをやってたので最初は器楽の方に志望しようとしたんですけど、 講習会やプロの人の演奏をみて、楽器だけじゃなく、音楽の可能性などにも色々興味がわいてきました。楽器だけの経験じゃなく、テクノロジーと音楽の関系のような、色んな可能性のあるところが音環だと思って志望しましたね(笑)。僕の入学の時は、取手にキャンパスがあったんですね。

――取手と北千住の雰囲気は結構違いましたか?

そうですね。とりあえず取手は遠い(笑)。でも、取手だと美術の先端芸術表現科もあって、もっと身近なところでアートを楽しむこともあって良かったと思いますね。

――音環で学生時代を過ごしたことのメリット・デメリットは何か?

他の大学では経験できないことがメリットですね。しかも、いい人と先生と巡り会ったことが一番よかったんですね。 でも、個性強い人がいっぱい集まってるから、むしろ、これがデメリットになったこともあるんですね。

――具体的にどういったところですか?

例えば、僕の場合だと、一般の企業に就職して、音環の価値観で生きて来て、音環以外の人の価値観ということの理解が難しかったこともありましたね。これは会社の生活で 本当に感じたんですけど、僕の会社だと理系の出身が多いから、彼らの価値観とは差を感じたりもしましたね。

――ですよね。いろいろ大変そうですね。学生時代の活動が今の自分に与えた影響ってかなり大きいですよね。

そうなんですね。学生時代には電子音楽のコンサートをやってたり、他の演奏者のPAや交流が多かったので、音楽とテクノロジーの関係性について興味があったんですね。個人的には音楽のためのテクノロジーでないと駄目だとも思うんですね。でも、それを実現することですけど、難しいね(笑)。

プロ3・プロ6の人は数学の勉強を頑張れ

――数学は音響にとって本当に大事だと思いますが、仕事現場で数学で苦労したり、エピソードのようなことはありました?

読む必要のある文献が数式だらけでも、それは時間をかければ読むことができますが、例えばフィルターのアルゴリズムの数式をホワイトボードに書いて議論するようなとき、自分がすぐ理解できずに苦労することはよくあります。

あとはソースコードのコメントを読んでも、信号処理や数学の用語で書かれているのでコメント解読するために信号処理の教科書開き直したり。

数学というか、電気の話ですが回路図はまだ苦手なので記号から調べ直したり、インピーダンスの計算で手間取ったりしますよ。数学、電気、物理では本当に苦労します。

――学生の時、プログラミングをやってたり、Max/MSPを利用して、実験などにも使ったことをみたことがありますが、仕事現場でも役に待ちました?

主観評価実験用のアプリケーションを作るときにMaxを使ったりしますが、それ以外はほとんどC言語です。信号処理のプログラムを作るときはディレイやフィルターのライブラリから作るので、Maxやサードパーティのライブラリで簡単にできたことが、自前で作るとこんなに大変なのかといつも痛感します。そういったライブラリが豊富に用意されているMaxは音楽家•アーティストが作品制作に集中できるようによくできていると思います。

――大学院生の時にはホールでの録音も多かったと思いますが、個人的に一番いいと思うホールはありました?

いろんなホールに行きましたが、僕は藝大の奏楽堂が好きです。響きも自然だし、演奏する芸大生が奏楽堂の響きを知っているから、演奏家が響きで失敗することが少ない。そういう意味では「ホームグランド」ですよね。音響的な特性はもちろんだけど、演奏家が良い演奏してくれないと、良い録音はできないですから、響きにしても、バックステージの作りにしても、演奏家が気持よく演奏できるホールは好きなホールです。

――AES(Audio Engineering Society)関係で海外でも発表したことがあると思いますが(2011年 AES)、なにか面白いエピソードってありました?

エピソード1 スティーヴ・ライヒの作品を多重録音、サラウンドmixした作品をStudent Competitionに出したのですが、その後のパーティで世界中のいろんなひとから「とてもエキサイティングだった」と声をかけられたのは嬉しかったですね。

ライヒは現代音楽の中ではポピュラーな方だけど、いわゆるジャズポップスやクラシックの作品が多いなかで、私が学生時代にずっと関わってきた現代音楽というジャンルの作品で勝負して、評価されたのはとても嬉しかったです。

エピソード2 副賞としてCelemony Melodyne(オーディオ編集ソフトウェア)を頂きまして、代理店の方と一緒に頂いたMelodyneの箱を持って一緒に写真を撮ったりしたんです。

それで意気揚々と日本に持ち帰り、しばらくしてMelodyneを使う機会があったので、箱を開けてみたらなんとカラッポでした。それで急いで学生支部の方に連絡して、いろんな人をたらい回しにされ、やっと代理店のひとに連絡とれたら、

「ごめん!アクティベーションコード渡すの忘れてたよ!」と言われました(笑)。

やっとの思いで使えるようにしてもらいましたが、英語のメールを一番書いたのはこのときだったと思います(笑)。

――学生時代にはインターンなどの経験はありますか?

R/D関係でヤマハ(株)でソフトウェア開発の課題をやりましたね。ちょっと、ヤマハとの契約もあるので、詳しいことは言えないよ!(笑)

――楽しそうですね。プロジェクト3、もしくは、音環にとって一番必要だと思うことってありますか?

主にプロジェクト3、6に対して言うけど、数学の勉強を頑張っておいた方がいいと思います。数学の世界が音響に影響を与えるため、録音を行うときにも数学的な理解があればなおさらいいと思いますね。しかも、僕の場合、就職してから理工系の人との仕事が 大半だけど、彼らとの共通言語としても数学は必要になりますね。

――最後、後輩に一言はありますか?

ちゃんと勉強しろよ!(笑) (了 2013年12月)

 

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