オンガクカンキョウソウゾウカ?

人が出会うきっかけとなる場をつくりたい
  
プロジェクト2 学部3年 N. M. さん

「人が出会うきっかけとなる場をつくりたい。谷中でのアートプロジェクトは私のやりたいことそのままだった。考える暇もないくらい忙しいけど、これからは現場で起こる問題や悩みを言葉にしていくことを大事にしていきたい。」と語る森本菜穂さん。アートの現場で考えること、学ぶことは何か。(インタビュアー:風間勇助(プロジェクト2))

出会いから始まる

――そもそも音環を受けようと思った理由って何?

「人が出会うきっかけとなる場をつくりたい」という思いがあった。でも、"アートマネジメント"っていう言葉も知らなかったし、"アートプロジェクト"も知らなかった。学科説明会に来ても亀川先生自慢のスタジオとタク(ミキサー)への愛しか伝わらなかったから(笑)。マネジメントってこともそもそもあんま情報もなく、音環に入ってからもプロジェクト4と迷って、でもプロ4みたいな作品より自分は商業的な舞台とかミュージカルとかが好きだったから、最初に考えていた通りプロジェクト2に入った。風間君はなんで入ったの?

――俺はもともとそれこそ亀川先生の愛を受けとって(笑)、プロジェクト3志望で、わかりやすくあのタクをいじれるようになりたいって思いがあった。高校が理数系の進学校だったんだけど、音楽には将来関わり続けたくて、でも音楽の技術はそこまでないし、録音とかそういう関わり方なら、NHKのN響の録音で世界各国まわれたら超いいなって思って入った。

それある! 音楽そこまでできるわけじゃないんだけど、でも「芸術に関わりたい!」とか「音楽に関わりたい!」って思いは強くあるんだよね。でもそれって切ない(笑)。音環って切ない学科なのかも……。

――で、一度はプロジェクト3に入るも、きむらとしろうじんじんさんや椿昇さんといったアーティストたちに出会って、「なんだこれ!?」っていう衝撃とともにプロジェクト2に移った。作品それ自体ももちろん興味あるけど、いろんなアートの現場を通して芸術・文化の社会的意義みたいなことを熊倉先生に教わるようになって……。アートってたしかにまず出会いから始まるよね。俺もなほちん(森本)に、まずじんじんさんと出会わされた感じがする。

アートマネジメントの舞台、現場

――受験の時の自己表現って何をしたの?

マイケル・ジャクソンを歌って、歌で世界を平和にできないかって壮大なことを言った(笑)。だけど、実際にアートプロジェクトの現場とか入ってみると、不特定多数のマスではなく、一人ひとりと向き合っていくことの方が重要だし、そこから始まるんだよなって気づいた。

――アートプロジェクトの現場って必ずしも音楽があるわけじゃないと思うんだけど、音楽がやりたかった!とか感じなかった?

だんだん音楽のコンサートそれ自体には興味がなくなって、演奏(表現)している人がどこに面白さを感じているかの方が興味ある。だから美術でも音楽でもオッケーみたいな(笑)。その演奏とお客さんをどうつなぐかみたいなことに興味を持つようになった。「ぐるヤミ」なんかは実際に出会っていった人たちから企画が始まるし。

――森本さんが関わっている谷中のプロジェクトについて説明お願いします!

「ぐるぐるヤ→ミ→プロジェクト」といって、谷中という、上野の芸大からも歩いて行ける場所で、今は雑誌に載るくらい注目されている、昔の町並みが残った情緒ある下町を舞台に展開しているアートプロジェクト。"ぐるぐる"と"ヤ→ミ→"の意味はWebで調べてください(http://okatte.info/guruyami2011/index.html)。主に「妄想ツァー」「ぐるぐるミックス」というプログラムを社団法人である「谷中のおかって」が企画しています。若いアーティストたちや企画者たちのプラットフォームを築き、地域住民と地域外から訪れる人、企画者とアーティスト、プロの表現者と若手アーティストなどさまざまな人をつなぎ、新たな交流、新たな活動を生み出していける場づくりを実践しています。

――妄想ツァーは強烈だよね。町のあちこちに表現者がいて、お客さんはグループになって、手書きで書かれた地図をもとに、グループごとにさまざまなコースで表現者たちに出会っていく。その表現も強烈だし、手書きで書かれた地図で迷うこともトラブルもあたりまえで、絶対に予定不調和なんだよ。

風間君好きだよね(笑)。でも、私も最初関わってみて「作品―鑑賞者」みたいな構図じゃなくて、お客さんも巻き込んでいって、お客さんが主体的に妄想すること=参加することが今日的なアートなんだなって思った。今でも出会うお客さんに「アート」って言うと美術館とかコンサートホールのイメージが強いんだけど、だんだん「これがアートなの?」って知らず知らず巻き込まれていくんだよね。

――毎年来るお客さんの目が肥えていくのがわかるもんね。僕らが気づかない町のある風景を「これも妄想?」なんて言われたりして、アートってこうやって多様性というか、寛容性(?)なんでもかんでも面白い! って思える気持ちを育んでいくんだろうなって。活動はどのくらい行なってるの?

私は今「ぐるぐるミックス」という企画に関わってる。これはきむらとしろうじんじんさんというアーティストと幼稚園などで行なう子ども創作教室で、隔月の毎週水曜日にやってます。

――けっこう準備やミーティングなんかやってるよね。

そうだね……。毎週火曜のプロジェクトの授業でも作業をしているし、それ以外でも土日も含め、ミーティングは欠かさずあるよね。遅い時で深夜になることもたまに…。

――イベント当日はもちろんだけど、ミーティングはアートマネジメントの一番の舞台でもあるよね。ミーティングに限らず現場に出ることって慣れるまでけっこう苦しいよね。

他の現場との関わり

風間君の現場は? 取手はどんな感じなの?

――俺は茨城県の取手アートプロジェクトというところで「半農半芸」というプロジェクトの立ち上げから関わって、産業ではなくて文化としての農業にアート的アプローチを挑んでる。俺自身はけっこうやりたい放題で、いろんな分野の専門家を招いた勉強会の企画・運営や、場を開いた時の記録をブログなんかで記事にしたり、最近は畑仕事もやってる(笑)。芸大に来て農業したり放射線について考えたりするとは思わなかった。でも俺はアートっていうのがそういう何か目の前にあることから、知的関心が学問を問わず広がっていくもののように思っていて、一人ひとりが"考える"ことを大事にしたくて企画したり文章を書いたりしてる。

なんかいろいろ難しいこと考えてるよね。風間君はどうして取手の現場を選んだの?

――夏の集中講義で取手アートプロジェクトが扱われて、その時俺はまだ1年生だったんだけど、生意気にも「運営にはPDCAのサイクルが必要なのに、取手はきちっとチェック=評価ができないうちに目の前の作業ばかりに追われているので〜」みたいなことを言って関わり始めてみたら、いやぁ〜目の前の作業に追われますね(笑)。そのとき、教科書通りにものは運ばないって思った。

風間君、最初の頃先生からしょっちゅう「合理的に考えればそうなんだけど〜」って言われてたもんね。

――そうそう。それでもついつい忘れがちになってしまう大切な評価とか言語化のプロセスに興味があって今でも関わってる。俺ばっかりしゃべってごめんね(笑)。

いやいや、プロ2を伝えるためですから。谷中、千住、取手、他にも院生とかは北本(埼玉)とか小金井にも現場があって、プロ2に入ってから自分たちで現場を選べるんだよね。で、お互いイベントの本番があれば、他の現場にもスタッフとして手伝いに行ったりして、その後ゼミで反省会をして……。

――うん。自分の現場ではけっこうやりたいことやらせてもらえるし、俺はむしろ自分が何をしたいのかに悩んだ。他の現場に行ってみてまた違う刺激を受けたりして考えることもあるよね。

そうだね。去年私も「半農半芸」の現場に行ってみたけど、谷中とはやっぱ違うなって思ったし、信頼関係があるからこそ(?)けっこうストレートにみんな言いたいこと言い合っていて、風間君も今は岩間さん(「半農半芸」ディレクター)と仲良くやってるよね(笑)。

現場で問題を抽出すること

――今プロジェクトでやっていることって入学前とのギャップとかはなかった?

それは全然ない。自分のやりたかったことがそのまま「ぐるヤミ」にあった感じ。自分の趣味との境界もわからなくなるくらい。でもそれじゃダメで、今は「ぐるヤミ」という人と人とが出会う場で、そこに集う芸術っ子(主に若手アーティストやアーティストの卵)の表現それ自体はもちろん、その表現のどこに面白さを感じてそうした表現をしているかに焦点を当てている。

――そういえばクラブポーリは?

※クラブポーリー:ポーリーは森本を意味し、ポーリーの歌やダンスといった表現をベースに、その場に集う人がまずは出会うきっかけの場となり、また表現し合う場にもなることを目指した企画。

寝かせてる(笑)。どうしても自分の欲求をぶつけてしまうから、もっと「ぐるヤミ」でもなんでも問題意識からスタートしたくて、今は研究について考えている。ぐるヤミに関わる人たちの"趣味"っていうのとは違う思い――ある種のプライドのような、宴会芸にはしたくなくて、地域の演奏団体に参加することでは消化できないなにか――があって、「ぐるヤミ」に関わってくれている、そうした人たちの意識について今は考えたい。その点、風間君はちゃんと考えてるよね。

――考えてるというか、現場から逃げまくりというか(笑)。今は自分で関わりしろがわかってきたけど、最初はとにかくわけがわからず、自分が何も知らず何もできないところからスタートして、あれこれ悩んで……。俺の今の問題意識は、アートプロジェクトの記録において、完成した作品それだけじゃなく、完成に至るプロセスを追った主観的・当事者的発信の重要性?アートっていう主観的なもの、わかりやすく言えばある個人の感動・衝撃を、いかに他者に伝えられるのかかなぁ。現場は他にもいろいろ考えることいっぱいなんだけどね。

私もいつもモヤモヤすることをなるべく言葉にして、ノートに綴るようにしてる。先生も私たちに現場で問題を抽出する能力を、とか言うし。でも実際は怒濤の作業に追われたり、忙しさで忘れてしまうことも多く、大事だってわかっているけどけっこう難しい。教科書とかに書いてある「企画を進める上では情報の共有が大切」なんていう文言がいかに難しいかっていうのをまず知るのが現場だし、本とか読んで「これってどういう意味だろう?」っていうことをつきつめていくと現場があったり、そう考えると現場を持たせてもらえるのは幸せなことなんだよね。とにかく事務作業のスキルからマネジメントの考え方まで、いろいろ身につくし、タフにもなるし。

いろんな人がいる、音環!

――なんか印象に残ってる授業とかある?

1年生の時のスタディスキルで、亀川先生の授業の時にスタジオでみんなの好きな音楽を5.1chで聴くっていうのが面白かった。音楽を聴くっていうのを考える授業でもあったけど、それよりみんなの音楽の趣向とかわかったし。音楽の何を聴いているのかも違ったよね。

――エグザイル歌下手だよね〜とか最初に言われて俺は「えっ!?」と思ってしまった。みんな耳が肥えているというか、違うんだよね。ユーミンと椎名林檎を聴いてきた俺には、神聖かまってちゃんも相対性理論も、LadyGagaも異文化だったし、そういうのを情報交換し合ったりして楽しんだり。

本当にいろんな人がいるよね、音環って。考えていることもやることもみんな違うし。プロジェクトは2でも、授業とかでプロ4のような舞台系の授業だってとれるし、風間君も最初は音響系の授業とかとってたし、プロ1の西岡先生の熱意溢れる和声の授業もとったよね(笑)。

――うん。現場でもトークイベント程度のPAやったりしてるし、日曜大工のようなDIYも身についたり(笑)。授業では一般大と違って少人数で先生との関係も密に、いろいろ勉強できることがいっぱいあるんだよね。では、最後にひとことお願いします。

音環に入ったら混乱しますよ! 悩みますよ! 不安にだってなりますよ! でも、自分で考えるしかないと思う。そしてその結果として、音環にはいろんな人がいる! (了 2012年7月)

履修科目

 

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