オンガクカンキョウソウゾウカ?

実践と研究から文化をみる
研究をいつか現場でのマネジメントに応用したい
プロジェクト2 学部2年 M. H. さん

音環に芸術表現活動だけでない社会性を感じて入学したHさん。1年の時に経験した現場を離れ、今は研究を主におこなっている。プロジェクト2で参加した現場での心境の変化、葛藤を聞いた。

音環ならではの授業

――Hさんは今年と去年はどんな授業をとったんですか?

上野の方の著作権概論とか副科尺八、写真史、千住だと音響技術史、とか芸術運営論の音楽マネジメントの授業をとっています。音楽だけじゃなくていろんな交流科目もあったりしておもしろいです。1年の時には必修ばかりであまり授業はとれなかったので今年はとりたい授業をとれてる感じがします。これまでの授業は、せっかく音環に入ったんだからと思ってサウンド系の授業とかとってましたね。

なぜ “音環” だったのか

――音環って授業からして独特の学科じゃないですか。なんで音環を受験しようと思ったんですか?

高校での大学紹介みたいなものがあって、それにOGの音環生の人が来てその話を聞いたのがきっかけです。その人はプロ4だったのですが、「こんな学科があるんだ」と思いました。ただ表現活動として芸術を捉えるのではなくて、そこに社会性を持たせているというところに魅力を感じました。しかもその学生ひとりひとりの自主性が尊重されている感じがして、そのお話を聞いて「この学科に絶対入りたい」って思いました。社会に目を向けていて、開いているっていうところが他にはないんじゃないかなって。最初は不審そうにしていた家族にもそこの部分を話したら「いいんじゃない」ってなって。音楽に関わりたいっていう気持ちがあったので、ちょうどいい、おもしろいって思いました。受験期になるとちょっと迷いましたけど、やっぱり大学は自分のやりたいことを勉強した方がいいなって。

受験対策

――音楽に関わるっていうことで言うと、入学前はずっと音楽をやっていたんですか?

ピアノをやっていたんですが、あまり専門的にとか音大を受ける感じではなかったです。お菓子欲しさにレッスンに行ってました笑。

――習い事って感じだったんですね。その他の受験勉強はどんなことしていましたか?

受験期は高校の音楽の先生に楽典を教えてもらいました。一次試験の筆記はちょっとどうしていいかわからなくて笑。でもとれるところは落とさないようにしていました、楽典は絶対落とさないとか。文化史みたいな問題も出たりするんですが、これはもう対策のしようがない感じもありますし。あとは私は小論の対策に重きを置いていましたね。本を読むのはずっと好きで、その読んだ本について小論文を書くっていうのをひたすらしていました、予備校にも通ってたりしたんだけど、先生と合わなくてすぐやめてしまいました。なので小論文に関してはずっと1人で勉強していましたね。

――受験の自己表現はなにをしたんですか? ピアノ?

いえ、自己表現では映像作品を作ってプレゼンしました。それだけ聞くとプロ5みたいですけど。その時に気になっていたことが、電車の中とか街を歩いていてイヤホンをつけている人が多いなっていうことだったんです。息子と母親みたいな密接な関係の人たちですら話している間ずっとイヤホンをつけているとか。それってどうなんだろう、どういう影響があるのかなって思って、そういうことを題材にした映像を3分くらい流して、残りの時間で説明しました。自然の中の音を使ったりとかして、そういう音とか人の話を聞けるっていうことが柔軟な社会なんじゃないか、イヤホン社会は危険なんじゃないかっていう問題提起的な作品でした。高校時代から映像に興味があって、時々撮ったりしていました。当時読んでたサウンドスケープの本に感化されたりしたのも、そういう映像を撮り始めたきっかけですね(笑)。

プロジェクトでの苦しみ

――自己表現の話を聞くとプロ5のイメージですが、所属プロジェクトの希望は迷ったりしましたか?

迷っていました。プロ2とプロ5でどっちにしようと思っていたんです。でもやっぱりプロ2の方がおもしろそうだと思ってプロ2にしました。実際に現場に行くっていうのが魅力でした。しかもプロ2で関わっているものって地域密着型のアートプロジェクトが多いのですが、その「地域」っていうものに興味がありました。その特定の場所で、そこに住む人を幸せにできるようなプロジェクトをしたい!って思ったんです。

――住んでいるのはどこなんですか?

杉並です。ずっと都内に住んでいたので、よく言われている「地域での人の繋がりの希薄さ」みたいなものは感じていました。越後妻有トリエンナーレの話を聞いたり文章を読んだりしていて、すごくおもしろいなって思っていました。でも実際にプロ2でのアートプロジェクトに参加してみると結構つらくて、これが現実かって思ったり(笑)。

――プロ2はとにかく現場という感じですよね。

そうですね。プロ2は学生が地域に密着した学外のアートプロジェクトに参加するのがプロ2の活動です。わたしは去年から新しく始まった北千住でのアートプロジェクト(アートアクセスあだち)に所属していました。理論と実践、という意味では、とりあえず1年生のうちは現場に行って作業を経験して、1年生の時点では自分で企画をたてるところまでは求めてないから、って熊倉先生はよくおっしゃってますね。そこから自分の問題意識を発掘してからが、学問としてのというか、ただ現場だけやるのではない授業としてのプロジェクトが始まる感じでしょうか。

――入る前と入った後のイメージの違いはありましたか?

入ってからは理想化してたものが本当に現実化できるのか、やりたいことなのかなって思ってきました。周りの人を幸せにできるアートプロジェクトってなんだろうとか、その口だけになってしまう感じとかに悩みました。現場に出てわかったことの1つでもありますが、必ずしもそういうアートプロジェクトは人を幸せにしないんじゃないかなと思い始めてしまって。実際に街の人に拒絶されたこともあったりしました。そこから逃げちゃいけないと思いつつ、逃げてしまいましたね。「幸せ」っていう概念だけではなくて、理論化の必要に迫られているように思いました。とにかく現場で下積みをしろって言われていたのですが、それが自分の中でタスク化されてきてしまって。

現場から研究へ

――Hさんは今年度現場を離れることにしましたよね。それは先ほど言っていたつらさもあると思うのですが、どういう心境からだったんですか?

プロ2での作業はすごく大変そうで、でもちゃんとやろうって思っていました。でも、だんだんその作業がただタスクとして負担に思えるようになっていました。「これがなんのためにあるのか」「これをすることによってどういうことができるのか」っていう風に色々考えてしまって動けなくなってしまったんです。自分が何をやりたいのかをしっかり持っていないとつらくて、言葉にできるなにかがないと不安で、とりあえず体を動かすっていうことができなかったんです。でもやっぱり実際に現場で動けるっていうのはプロ2のおいしいところだっていうのは思います。上野の学生(上野校舎にいる、つまり音環以外の人たち)にコンサートのマネジメントを頼まれたりするっていうのもその経験があってこそだと思うので。

――今はどんなことに興味を持っているんですか?

うーんどうなんでしょう。意識としては「文化」っていう目線で見ていたいと思っています。今はアメリカの文化政策についての本を読んで勉強しています。以前あった「地域」への興味から国際的なものに興味が移ったんでしょうかね。最初はメトロポリタンオペラのことがきっかけで、戦略みたいなものに興味を持ちました。文化として歴史あるものを廃れさせないようにしようとしている事例を見て、改めて「こんなこともできるんだ」って思いました。日本での歌舞伎や能に応用できないのかなとか、そういうことを考えています。全然マネジメントのことなんて知識がないので、今研究でマネジメントの手法を勉強してもいいんじゃないかなって思って日々本や記事、論文を読んだりしています。でもやはりいつか現場には戻りたいと思っていますね。そのためにいろいろ解決しなければいけない自分の問題もたくさんあるんですけど。

上野の学生との企画ではプロ2で培った現場力を発揮

――先程上野での話も少し出ましたが、音環の外ではどんな活動をしているんですか?

やはり上野の学生とやる企画が多いですね。この間は吹奏楽のコンサートの制作をしました。やはり外に発信していくことの大切さ、楽しさがありました。待っているだけではなくて、自分から動かないと。自分で機会をつくれるような人になりたいって最近すごく感じるんです。以前は関われる何かを「探す」だったのですが、場をつくって、そこに来てくれた人が「楽しかった」とか、なんでもいいんですけど何かを感じてもらえたらって思います。今も来年本番のミュージカルの制作をやっています。

――たのしそうですね。そういう話は自分から企画していくんですか?

知り合いから声をかけられたりするのがきっかけで話をもらったりします。去年は藝祭委員をやっていたので、指揮科とか作曲科とか、器楽の子もちらほら。パンフレットを作ってたんですけど、やってよかったです。デザイン科の人たちと一緒に、デザインのチェックとか校正を見たりしました。熊倉先生曰く「サークルじゃないの」なんですけど(笑)。

将来への展望

――研究を始めたことでいろいろ考えることもあるかもしれないですけど、将来の夢とかありますか?

うーん。まだわからないですね。でも制作系のことをやりたいです。音楽や美術にこだわらず、プロセスが似ている何かをいつか見つけたいと思っています。 (了 2012年7月)

 

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