オンガクカンキョウソウゾウカ?

ポップスから現代音楽へ
器楽の特殊奏法を学び、室内オーケストラの作曲を目指す
プロジェクト1 学部3年 K. K. さん

幼少期からエレクトーンに親しみ、映画音楽やミュージカル音楽の作曲家を志し音環受験を決意。入学後から現代音楽に興味を持ち始め、芸大器楽科に楽曲を提供するなどして実践的に楽器法を学ぶ。学外活動も盛んに行う駒井さんの学生生活についてインタビューを行った。

入学前はポップスの音楽制作に興味があった

――早速ですが、入学前にどのような経緯があって音環の受験を決意しましたか?

まず僕はずっとエレクトーンをやっていて、だんだん曲作りに興味を持つようになりました。最初は地元(北海道)の教育大に行こうかなと思っていたのですが和声の先生に上京を勧められ音環にいきつきました。

当時は現代音楽には興味がなく、電子音楽かアニメーション音楽をやりたいなと思っていたんですね。受験前の音環の第一印象はDTMとか出来るところなのかなと思っていました。スタジオもあるし、ジャズとかの授業もあるので実践的なのかなと。それで受験を決めました。

――受験の時面接の自己表現では何をやりましたか?

プロ1志望だったので曲をつくりました。4台ピアノのための曲で、打ち込み経験はなかったのですが、3台分は打ち込みでつくり、1台分は自分が実際に生演奏しました。

当時は特に劇中音楽の作曲をやりたいと思っていたので、曲にはME(*1)を織り交ぜストーリー性をもたせて作りました。イメージはトムとジェリーのような感じですね。

あと音楽環境創造科という名前から、サウンドスケープが結構重要なのかと思って鳥越さん(*2)の本を読んだり表象文化論系の本を読んで面接の時に言えるようにしました。それを読むうちに音楽の歴史も見えてきて、現代音楽とかも自然と受け入れられるような気持ちになったのが良かったところかもしれません。そういう経緯もあってか、入学する前から無調音楽もいいんじゃね?と思うようになりましたね。

――現在は現代音楽に取り組まれていますよね。

入学してからは独学でスコア読んだりコンサート行ったりして、ていうのもやっぱり上京したんでコンサートの機会が地元に比べてぐっと多いんですね。現代音楽って、聴くにつれて調性音楽を聴くときとはまた違って音響を聴取するような耳が形成されるような気がするんですよ。訓練すると変わってくるっていうか。ソルフェージュみたいなものかな。それでだんだん現代音楽も面白いなと思うようになりました。

プロ1の中ではゼミは3つに分かれているんですが、僕は現代音楽を取り扱っている西岡先生のゼミに所属しています。毎週火曜に行われるゼミでは、書いた曲を持参して先生のチェックを受けています。今年度は教科書を使って現代音楽の歴史についての勉強も始まりました。みんなで輪読して先生が解説を加えて、という感じ。

入学後はどん欲に企画に参加する

――その他に入学前と後で心境の変化はありましたか?

とにかく最初の一年で価値観がかなり変わりましたね。1年ではじめて書いた器楽曲が金管五重奏だったんですが、今までエレクトーンでやってきたような作曲法ではだめだって気付いたんです。そのエレクトーンからの脱却にはまる一年費やしたような気がします。

あと、入学前はなんで音環でインスタとかやっているんだろう、畑違いではないかと思っていましたが、入学してからは、音楽学部だから、とか枠組みでとらえてたのは違ったなと思うようになりました。舞台もメディアアートもいくらでも音楽との関わりあるからうちでやってもいいのかなと思うようになったんですね。

自分のことで言えば、入学前は劇伴とかやりたいと思っていましたけど、現代音楽に興味出て来てからはドイツに留学したいなと思うようになってきました。

――なるほど。では1年生の時にどのような活動をしていたか教えてください。

1年生ってプロジェクトにわかれる前に3ヶ月の猶予があるじゃないですか。僕はそこで「プロジェクト0」っていうのをやったらどうかって提案したんです。コンセプトとしては、どのプロジェクトにも所属してない今だからこそ出来ることをやってみようというもので、たとえば、あとから振り返って原点だなと思える曲を書きたいなと。だけどその3ヶ月っていうのが思いのほか早くて結局流れてしまいました。なのでその年のアートパスでは、やっぱり原点になる曲を書こうとプロ1の4人で話し合ってピアノ曲を書きました。その曲はいまだによく振り返っています。

あと先ほども言ったように、ミュージックフェスタでは金管五重奏を書きました。

アニメの音楽もやりました。編成はヴァイオリン、チェロ、ピアノのトリオです。

あっ、それからこれは超重要。上野チャルメーラの話。

――上野チャルメーラって?(笑)

上野チェルメーラってのはオーボエ族のみの4重奏のグループです。僕は寮生なんですけどその寮仲間が結成したグループで、親しみやすい曲を演奏したいというコンセプトで始まりました。それで編曲を頼まれて、同期の對馬と一曲ずつ、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」から、「こんぺいとうの精のおどり」と「花のワルツ」を編曲しました。これを録音したものも、アートパスに出品しましたね。この上野チャルメーラの活動は今でも続いています。震災のあとにチャリティーをやろうということになってあちこちをまわりました。その時にチェルメーラのテーマ曲を作らなきゃということになってチャルメーラ変奏組曲を作りました。テーマと変奏の9曲から成っていて、学習和声風に作ってあります。

学外活動で経験値を上げる

――すごいですね。学内活動だけでもかなり盛りだくさんという感じですが、学外活動も行っていたんですよね?

北大の知人がゲームを作っていて、音楽とゲームのインタラクティブなゲームを作りたいので手伝ってくれと言われました。それで音楽マインスイーパーというゲームが出来たんですが、これが結構反響があって東京ゲームショウの「Sence of Wonder Night 2010」というアイディア性を競うコンペに選ばれました。

あとは、東大のエレクトーンクラブに所属して結構がっつりやっていました。

――エレクトーンクラブはどういったクラブなんですか?

東大エレクトーンクラブ(通称エレクラ)と言います。今年でできてから16年になります。経験者も初心者も編曲やる人も色んな人がいて、みんなで楽しくやってみよう精神ですね。学祭が年2回あってそれ以外にも大きなコンサートが数回あります。最初は、東大が本郷にあって近いのかなと思い見に行ったんですが実は活動場所は駒場でした(笑)雰囲気がちゃらちゃらしてなくて考えもストイックでいいなと思い入部を決意しました。やっぱりずっと続けてきたエレクトーンはやめたくなかったし続けることが有意義だと思ったので。

スケジュール的に大変なことはよくあります。2年生が執行代なので2年の時はアートパス前に駒場祭の編曲と運営とが重なってめちゃめちゃ忙しかったです。どうしようもなかった。なんせ運営幹部でかつ学年代表の編曲者のようなポジションだったので。

現代音楽の初演

――じゃあ2年生のアートパスは苦労されたんですね。

アートパス前は、本当にしんどかったです。ゆっくり作曲できなかった。「間-Ⅱ-」というものを書いたのですが、これが実質はじめての現代作品の初演となりました。(「間-Ⅰ-」は前期作品として提出していた。)編成はフルート、ヴァイオリン、ピアノ、尺八、箏です。邦楽器の持つ間のようなものを、文献からいろいろ調べてその特徴をアピール出来る曲をかこうとしたんですがあんまりうまく行きませんでした。反省点はたくさんあります。でも僕は4年間を通して一通りの楽器法を学びたいと思っていて、2年生では木管楽器と邦楽器と決めていたので、それはよく勉強できたかなと思っています。

――なるほど。そういえば2年生でも上野チャルメーラの活動は続いてたんですよね?

2年生でもチャルメーラの曲を書きました。去年(2011年)6月に岩手県でチャリティーやることになって。チャルメーラが有名になってきたことで、学校からバスオーボエというマニアックな楽器を借りれることになりオーボエ定期演奏会でクープランの墓を4重奏に編曲したら好評でした。その後芸大がヘッケルホーンという楽器を購入したのでこれからそれを使ってまた曲を書く予定です。そんなこんなで管楽器に慣れたのでミュージックフェスタは木管五重奏を企画して、作曲もしました。

あと学外活動としては、ムサビの映像研究会に関わってサウンドデザインと曲を作りました。

――そして3年生になりましたね。今年のプランは?

今年は弦楽器と打楽器を学ぶのがテーマです。前期の取り組みとしては、福井県越前市で開催されている武生音楽祭の作曲コンクールに提出すべくビオラとパーカッションの曲を書いています。苦戦中ですが…。それと吹奏楽の委嘱があって、締め切りすぎちゃったんですけど(笑)これも苦戦中。

後期はミュージックフェスタで弦楽四重奏かサクソフォーン五重奏のどちらかをやりたいですね。アートパスでは去年失敗した、概念と作曲を結びつけるような作品を作りたいです。構想は、エレクトーンと打楽器と木管五重奏。指揮者をつけて計8人になる予定です。もうアイディアはかたまってるので形にするのが楽しみです。ちなみに4年では卒制として室内オーケストラを書く予定です。

作曲の勉強は独学の部分も多い

――かなりがっつり勉強されてる駒井さんですが、この授業は取ってて面白かったっていうのはありますか?

音環でとれる作曲系の授業は和声、ソルフェージュ、スコアリーディングくらいしかないんで結果的にほぼ独学でしたね。Youtubeで面白い曲を見つけたら、図書館でスコア借りてきて分析して、わからない部分あったら管弦楽法の本を開いてああでもないこうでもないと、(同期の)對馬と話しながら、まぁ楽しんでやってたって感じかなぁ。半分以上は教職だし語学や体育も入れたらほとんど余計な授業とってないです。強いて言うなら楽しかったのは音響系の授業。録音技法研究はよくわかんないけど楽しいです。ジャズポピュラー演習も楽しかったです。ジャズはやっぱりエレクトーンで少しやってたしコードも読めたしテンションもわかったので抵抗なく出来ましたね。サウンドシンセシスは今年とってるけどたのしげですよ。倍音とかもうしつけーよと思いつつ役には立つし…あとなにげに教職用のリコーダー実習が面白かったかな。他には今年で先生が変わってしまうようですが、芸術情報概論は柏崎先生の講義が面白いです(笑)

――音楽基礎演習(*3)どう思いますか?

僕たちの時は今と違う先生だったんですよ。マニアックな先生で、そこは賛否両論だったけど僕は好きでした。名前でサウンドロゴを作ろうという授業があってそれが印象的でしたね。僕の作ったやつが爆笑されて…しばらく同期生の間で拡散されていました(笑)ソルフェージュっていう意味でいえばテシュネ先生のソルフェージュが楽しいんじゃないかな。ヴォカリーズ、カデンツ、数字つき低音、バッハや古いフランスの人の初見視奏、現代曲の初見など結構本格的なんだけど音環のレベルをみながらやってくれます。

音楽教師としての道を視野に入れる

――最後に進路についてお聞きしたいんですが。

地元の教育大に行きたいって思ってたくらいだから、ずっと音楽の先生になりたかったっていうのがあったんだけどそれは芸大に進学することにしてから封印していました。でも一応教職の授業はとってて、こないだ実際に模擬授業とかやってみたらやっぱり教えるの好きだなあと思ってきてしまって。来年教育実習いったらまた変わるかもしれないけど作曲は仕事にしなくても続けられるからなぁと思っています。ただどっちにしろドイツ留学はしておきたくて。就職してからでは行けませんから。大学院は音音(大学院音楽文化学専攻音楽音響創造分野の略称)に行ってゆくゆくはドイツ留学ということを考えています。 (了 2012年7月)

 

*1 Music Effect 楽器を用いるなどして音楽的に効果音を表現する

*2 鳥越けい子さん サウンドスケープの第一人者

*3 1年生で必修になるソルフェージュの授業

履修科目

 

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